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みなさん、どんなお仕事をされてますか?
大村さん僕は昨年までみなさんと同じプロジェクト推進の仕事をしていましたが、現在はビジネスプロデュース室で、ミュージアムの展示制作以外の新しい仕事を創生するためにがんばってます。
千葉さん僕はここ数年は公共のプロジェクトを中心に、さまざまな施設の計画・設計などに携わってます。今年からチームリーダーになって、後輩の模範になるように日頃の行動にも気を配るようにしてます。
伊藤さん私もこれまでは公共のプロジェクトが多くて、基本計画・設計、制作など一通りを経験してきました。最近では企業のプロジェクトも担当してます。
中平さん僕は企業の社員研修施設のプロジェクトを担当することが多いです。企業のプロジェクトも公共のプロジェクトも、クライアントがその場に訪れる人とどんなコミュニケーションをしたいのかを考えて、その機能を空間に落とし込んでいくのが僕たちの仕事だと思ってます。
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仕事で大切にしていること、こだわりをもっていることは?
大村さんプロジェクトで大事なのは顧客の要望を聞いて、本質を整理し、どう提案に反映させるかだと思います。みんなはどんなところに気を配ってる?
中平さんミュージアムをつくるのは、多くのお客様にとって初の経験。だから希望をそのまま受け入れるのではなくて、クライアントが意図するものを、どう表現すれば一番伝わるものになるのか、そもそもミュージアムをつくるのが正解なのかも含めて検討して、最善の提案ができるように心掛けてる。
千葉さんそうだね。「この間、東京で見たあれみたいなのをつくりたい」と具体例を示されて、そのまま模倣(もほう)するのは、実はそれほど難しくないんだけど、クライアントの想定を超えて「そうか、我々がめざしたモノはこれだったんだ」とハッとさせるような提案に育てるのが、僕たちに求められる能力じゃないかな。
伊藤さんいざプロジェクトが動き出すと、さまざまな立場の方からいろんな要望が飛んでくるじゃない?それらを整理して、最優先事項がいったい何かをクライアントと一緒に探っていく。そうした姿勢を忘れちゃいけないなと思う。
大村さんみんなが仕事をするうえで大切にしているこだわりってどんなところ?
千葉さん一人ではできない大きな計画を、さまざまなプロフェッショナルの方々と一緒に共創するのがプロデューサーの仕事の醍醐味(だいごみ)。その上で大切なのは、クライアントの要望に合わせて、一緒に働く仲間が120%のスキルを発揮できる環境を構築することじゃないかと思う。
中平さんさっきの話と重複するけど、僕の場合はクライアントの言葉の奥に隠された本質を洗い出して提案に表現すること。モノづくりのパートナーとして選ばれて、大きな金額の仕事をまかせてもらうんだから、核となる部分を丁寧に探って、納得いただいたうえで進めていく。そこはとても意識してるとこだね。
伊藤さん私は今携わっているプロジェクトでは、できる限り模型をつくって検証してる。立体物は距離の間隔などの印象が平面と違って、見えていなかったものがふと浮かび上がる瞬間がある。お客様も紙面から想像するよりもイメージしやすくなるから、ゴールを共有できるし、後戻りも減るなって思う。
千葉さんただ素敵なデザインという表面的な部分を超えて、たとえば企業のプロジェクトなら、その企業の理念や大切にしている想いを展示に反映するのも大事だなって思う。来館者は気づかないかもしれないけど、クライアントには分かるような、意味が語れるデザインを展示空間の色や素材などの細部に落とし込んで、コンテンツが一本筋の通っている状態にしたいって思ってるよ。
中平さんそういうこだわりは、アウトプットデザインに落とし込むうえで、忘れちゃいけないポイントだね。ふんわりとした「なんかいいですね」ではなく、理論をデザインに落とし込むのが大事だね。
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これがトータルメディアの強みかも
大村さん理論やストーリーを持たせたデザインを大切にする姿勢は、トータルメディアの社員の多くが持ち合わせるスキルだよね。そこは他社とは違う強みかも。クライアントにもその想いって伝わるかな?デザインが良ければすべて良しとはならないと思うんだけど。
千葉さんクライアントからデザインの希望を伝えられることも、もちろんある。でも、細かな点まで意味を込めて、会社やその地域の本質をつかもうとする提案を繰り返す中で熱意は伝わるし、「共につくっていく」関係性になれると思う。
大村さんなるほど、信頼関係を築く一助にもなると。それにしても信頼というのは、窓口として責任を担うプロデューサーという存在・役割がいればこそ築ける気もするね。チームが分散しすぎると、誰に話をすればいいか先方も分からなくなっちゃうから。
中平さん確かに企画、空間、デザイン、グラフィックなどの各チームがばらばらに打ち合わせして進めると収拾がつかなくて、どこかで歯車が狂い始めるよね。「この人に聞けば大丈夫」があるとないとでは、全体のまとまりが全然違うと思う。
千葉さん実際に「他社では打ち合わせによって違う人が出てきて、言い分も違って困ったことがあったが、御社は窓口の方が明確で助かる」とクライアントから言われたことがあるね。
中平さんただ、なんでもかんでも1 人で進めるのもリスクがあるよね。スケジュールが合わなくて、自分が打ち合わせに出られないと流れが止まってしまうことがないように、チーム制度を活かして2人体制でプロジェクトの指揮ができる環境を構築するようにしてるよ。
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思い出深いエピソード、
この経験で成長したなぁと感じることは?
大村さんこれまでに思い出深い仕事ってあった?僕は入社1 年目のときの大学博物館のプロジェクトをすごく覚えていて。僕は建築学部出身でもなければ、デザインの勉強をしていたわけでもなくて、大学では博物館の利用に関する研究をしてたんだけど。 それが、建築の知識もあんまりない入社早々に、現場監督を任せられて。右も左もわからず内心は混乱してたけど、それを一切表に出ないように心掛けたんだよね。「あの人がいるから頑張らなくては」という精神的な柱になることが自分の役割なんだと思って。 今振り返っても、なかなかキツイ経験だったけど、責任を持つ重さを現場で直に学んだことは、今に活きていると感じるね。だから新入社員こそ、早い段階で一度現場に入れば、すごく仕事への理解が深まる機会になると思うよ。
中平さん僕が印象に残ってるのは、入社3年目で企画から施工まで初めて通して携わった大手企業の研修施設のプロジェクト。月に1、2 度ある打ち合わせに各部署の代表が一堂に会して「我々はこういう研修をしたい」とそれぞれ意見を出すんだけど、すべての要望を根気強く聞いて、それを一つの形にまとめていくことにすごく苦労したなぁ。 でも頑張って向き合ったからこそ、今は当時のクライアントの担当者と「あのときは大変だった」と笑い合える仲になってるし、その方が業界各所に「トータルメディアの中平っていうのがいるからさ」と宣伝してくださって次の仕事につながることもある。
伊藤さん私は、大阪の文化観光施設で運営のヘルプに入ったときの経験が印象的だったな。館内で飲食をしようとする来館者に注意してまわったり、スムーズにイベントが進むよう案内をしたり。刻々と変わる状況に対応しなくてはいけない運営とは、かくも大変な仕事なのかと身にしみたわ。 昨年は大阪・関西万博の案件に携わったのだけど、当時はまだオープン前で来場客数は未知数。運営上のルールを決めたものの、本当に上手く運営できるか不安で。いざ始まると多くのお客様が来館されて、現場は日々臨機応変にオペレーションを見直して運営されてて。展示ばかりに気を取られず、運営を支えることもプロジェクトをまとめる立場として大切な心得なのかなと考えさせられたよ。
千葉さん僕は、入社4 年目で携わった観光拠点施設の経験が思い出深いな。「出身地のプロジェクトを好きにやってみなさい」と背中を押されて、勤務地である大阪から遠く離れたふるさとに長期滞在したんだけど、それまでは外部のデザイナーなど、上司から紹介を受けてプロジェクトチームを構成していたのが、この案件はチームづくりからスタート。大学時代の友達にも声をかけて、現地の人たちと一丸となってプロジェクトに取り組むことに。 普段お付き合いのある、展示空間づくりに慣れているクリエイターではない人に、正確に意図が伝わるように考えるのはとても勉強になったし、何より、地元のモノを手がけることへのみんなの熱意に大いに助けられたな。 初めて自らチームを組んで、地域の人たちと一緒に地域のモノをつくる──。その経験が今も自分の礎になってると思う。
伊藤さん私も同じような経験があって、担当したその地域は協力会社が少なかったんだけど、地元のリソース(資源)として残るように、あえて他県から協力先を連れて行かない「地産地消」にこだわった。 特に印象に残っているのが、初めて博物館のライティングを手がけたという職人さんが、本当に楽しそうに作業をされていて。家族にも誇れる仕事ができたとおっしゃっていて、改め て地域の力でミュージアムをつくる価値について考えさせられる経験になったなぁ。
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どんなふうにスキルを獲得していますか?
大村さんみんないろんなジャンルのプロジェクトを経験してると思うけど、スキル習得のためにしてることってある?僕は基本計画を手がけることが多いんだけど、斜め読みでもいいからとにかく本を読みまくってるよ。インターネットではすくい切れない情報が本にはあるし、地域や企業の成り立ちのちょっとした裏話など、自分で想定していたのとは異なる角度からも情報を吸収することができると思ってる。
千葉さん全く同感で、僕もインターネットの情報だけに頼らないように意識してるよ。興味のある領域のみに固執すると、仕事に広がりが出ないので。あとはやっぱり自分の足で知見を得 るのも、有意義だよね。 僕は建築系の学科出身で、空間づくりに関しては一定の知識を持ってたんだけど、ハンズオン(体験展示)となると、まるでアイデアが出てこなくて。そこで積極的にいろいろなミュージアムを見学して、写真を撮って、良かったところを言語化するようにした。それを繰り返すようになって、コンペやブレスト(自由な意見交換)で「こんな手法はどうか」とスムーズに意見が出せるようになった。引き出しが増えるとここまで違うものかと手応えを感じたよ。
中平さん僕も出張の際は、できるだけ周りのミュージアムなどに行くようにしてるよ。自分の好きなものはこれ!ではなくて、浅くてもいろんな事に興味を持つのが大事だなと思う。僕らの仕事はどんなタイプの案件が来るか分からないから。小さな興味がフックになって、その案件に愛着が持てるようになった経験がいっぱいあるからね。
伊藤さん私は、雑談で知識を得るのも大事にしてる。社内でも、協力先でも。各分野に詳しい人がすぐそばにいるのは、とても恵まれた環境だよね。迷惑にならない限りは「それって何をしているの」と、とにかく聞いちゃう。そこから対話が生まれたり、知識が深まったりして、興味の対象が広がるから。
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トータルメディアで働く人たちってこんな人?
大村さんトータルメディアって「人種のサラダボウル」のような個性的な人であふれてる会社だよね(笑)。ある会社の方が「自分の会社には金太郎あめを切ったような人しかいない」と言ってたんだけど、それは誰もが同じ結果を出せるっていう良さがあるけど、うちの環境は違うよね。きっといろんな人がいるからこそ別の角度から刺激があって、いい企画も生まれるんだよね。
千葉さん趣味嗜好が変わっている人が多いよね。カエルを偏愛する人や、妙にマイナーな分野の音楽に詳しい人がいたり(笑)。あとは外部から「みんな、すごく仲がいい」ってよく言われるね。 以前、打ち合わせの帰りに、部長から若手まで横並びに歩いている後ろ姿をクライアントが見ていて「みなさん、大学生みたいだった」と、言われたことがある。役職は一切関係なしとまでは言わないけれど、フラットな関係性はオフィス全体にあると思うな。
大村さんたしかに距離感が近いかも。さっぱりとした人間関係が社内に求められる昨今、やや逆行しているかもしれないけれど、展示をつくる上でコミュニケーションはとても大事なことだよね。 僕がトータルメディアに入社したころに比べて今はずっとオープンな雰囲気を感じる。フリーアドレスになったり、社内がリニューアルしたり、物理的な面や時代背景もあるかもしれないけど、風通しがよくて上司から部下に積極的に話しかけてくれるようになったなと思う。 とはいえ、トータルメディアの人って表立って明るい人ばかりというわけじゃなくて、むしろ内に情熱を秘めてて、それを爆発させて仕事に昇華させるタイプが多い気がするな。
千葉さんそうだね、明るい陰キャって感じかな?(笑)。大変だな、まいったなと口にしながらも、粘り強くプロジェクトに向き合って決して投げ出さない。そんな責任感のある人が多いよね。
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これからのミュージアムってどうなるだろう?
どんなことができるだろう?
大村さんみんな10年以上この仕事に関わってると思うけど、これからの文化施設やミュージアムはどうなっていくと思う?僕は今、ミュージアムの新しい活用を創生するために博物館の歴史をもう一度おさらいしてるんだけど、施設の役割が大きく変わるタイミングに来ているのではと感じてる。 それぞれ特性は違えども、ミュージアムは地域の文化が集まる場所。社会教育という既存の役割にとどまらず、社会をつなぐ拠点になることが求められてるんじゃないかな。価値が変わっていけば、来館人数をKPI(重要業績評価指数)とする今の評価基準も変わるはず。人口も減ってく中で「ミュージアムって人が来なくて、もうからなくて、やる意味あるの?」っていう議論がなくなるようになればいいなと思うな。
中平さんたしかに転換期なのかも。僕が企業の展示企画や基本計画・設計を担当してきて感じてるのは、転職が当たり前の選択肢になったり、今後ますます若い働き手が減ってく中で、社内ブランディングを高める1つの手段として企業ミュージアムや研修施設の需要が見直されてること。 「いい会社」のイメージを押し出すだけじゃなくて、過去の実績などから当時の熱量や思いを一つひとつ丁寧にほぐしていって、誰もがわかる形に昇華する。その会社がどうありたいかを空間とコミュニケーションで表現する。共感を生むツールは、インナーブランディングには大きな効果があると思う。
伊藤さん私は今、AI(人工知能)が展示の解説をする企画に一部関わってて、改めて技術進化のすごさを感じているところ。ミュージアムでは、やっぱり実際に人が語ってくれることに勝る体験はないと思っているけど、日本の人口が減っているのも事実。先進の技術を活かして、体験性を損なわずに学べる新しい方法をトータルメディアでつくり出していきたいなって、ぼんやりとだけど考えてるよ。
千葉さん僕もミュージアムの存在意義が変わってきているのをひしひしと感じるなぁ。一方で、展示手法や見せ方などが変わっても忘れてはいけないのが、文化を確実に伝えていく姿勢。何を文化としてとらえるかは答えが出ない問いだけど、あらゆるモノに価値を見出して、それを残し伝える手段として、展示空間づくりに向き合っていきたいと思ってる。
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未来の仲間にメッセージを
大村さん僕は仕事に対する視点を限定せずに、いろいろな物差しを持っていてほしいと思う。多様なクライアントと一緒に仕事に取り組む上で、視野が広ければ柔軟に対応できるし、そこで培った経験がまた別の仕事で思いもよらない知恵に化けることもあるから。
千葉さんそれは当社で働く人に大切な要素だね。たとえば地方の博物館の展示をつくるとして、自分と縁もゆかりもない地域の歴史を調べてそこに面白さを見出せるタイプはトータルメディアに向いているはず。僕らの仕事には「好奇心」と「探究心」が重要。知らない事柄に興味を持って、勉強するのが苦じゃなければどんどん活躍していけるんじゃないかな。
中平さん僕はどんな学部で学んできたかはあまり関係ないと思ってて。デザイン関係や建築関係の学びは、入社して役立つスキルもあるだろうけど、もっと大事なのは学生時代にきちんと一つのことに向き合う経験をしてきたかどうか。別に「好きなことに打ち込んだ」でなくてもかまわないと思うんだけど、諦めずに最後までやり遂げてきた道程が仕事において大いに力になるはず。
大村さんトータルメディアの仕事は、どの部署でもプロデューサーの素質やマネジメント能力が必要だと思うけど、みんなが思うリーダーシップってどんなもの? 僕は、向き合う案件に対して「一番愛を持って楽しんでいる」かどうかだと思う。チーム内でのモチベーションが人一倍あるからこそ、みんながついてくるんじゃないかな。
中平さんそうだね、それプラス「プロジェクトについて一番悩む人」かも。もちろんクライアント以上に。ぐいぐい引っ張っていくことだけがリーダーシップとは、僕は思わなくて「あの人の頭の中で悩んでもらえればどうにかなるんじゃないか」って頼ってもらえるのもリーダーなのかなと。
伊藤さん私は投げ出さないことが一番の条件だと思うな。未経験の分野でも、上司や協力会社に頼りながらでも、とにかく責務を自覚して行動するのが大事。自分もそうあるように頑張っていきたいと思ってる。
CROSSTALK
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プロジェクト推進座談会
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開発営業本部 ビジネスプロデュース室大村さん2013年入社。公共・企業問わず様々なミュージアムの整備を手掛けてきたが、基本計画(業務初期段階)の仕組みづくりや、事業全体のコミュニケーション計画が得意。
[過去に担当した施設]
Bridgestone Innovation Gallery、わくわくコマツ歴史館、新宿御苑ミュージアム、若松城天守閣郷土博物館 など
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プロジェクト事業本部 東日本事業推進中平さん住宅設備の設計を経験後、2015年トータルメディア開発研究所入社。企業のインナーブランディング施設の計画・設計、企業研修施設などの展示整備を手掛ける。
[過去に担当した施設]
小田急電鉄株式会社 安全深思塾、資生堂 福岡久留米工場 「SHISEIDO BEAUTY PLANET」、仙台市科学館 4階常設展示室リニューアル など
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プロジェクト事業本部 西日本事業推進千葉さん2016年入社。公共の教育・観光施設から企業のコミュニケーション施設まで幅広く担当。「意味が語れるデザイン」を軸に、地域を巻き込み、その土地ならではの展示づくりに取り組んでいる。
[過去に担当した施設]
Q・B・Bプロセスチーズパーク、おしかホエールランド、大和ハウスグループみらい価値共創センター コトクリエ、沖縄県県民の森 森のふしぎ館/木のふれあい館 など
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プロジェクト事業本部 西日本事業推進伊藤さん2017年トータルメディア開発研究所入社。入社以来、公共博物館の計画・設計、防災学習センターや企業ショールームなどの展示整備を手掛ける。
[過去に担当した施設]
名護博物館、大阪・関西万博 関西パビリオン滋賀県ブース、DAIWA防災学習センター(大阪市防災学習センター)など
CROSS TALK