
地域ブランディング
地域の人々が主体的に関わり、自らの手で未来を創るために
過疎化、少子高齢化、気候変動、産業構造の変化。日本各地が抱えるこれらの課題に対し、今、多くの地域が自分たちの「アイデンティティー」を見つめ直そうとしています。私たちは、この要請にこたえるために、地域の自然、歴史、文化、産業といったリソースを現代の視点で再編集し、人々の心に響く「コミュニケーションのステージ」を創り出すのです。このステージづくりには、以下の4つの要素の循環が大事だと考えています。この循環は、どこから始まっても構いません。観光客との出会いが地域住民の意識を変えることもあれば、ビジネスの変革がアイデンティティーを再定義することもあります。大切なのは、このプロセスを通じて地域の人々が「自分たちの手で地域を良くしていく」という主体性、すなわちシビック・プライドを育むことです。私たちは、そのきっかけとなる「コミュニケーションのステージ」を地域の人々と一緒に創り上げていくことを大切にしています。
出会いを紡ぐナラティブの創造
観光から関係へ、一過性でない地域とのつながりのデザイン
従来の地域振興は、観光客を呼び込むことに重点が置かれてきました。しかし持続可能な地域づくりに欠かせないのは、一過性の観光や消費ではなく、地域と人々の間に続いていく「関係性」です。その関係性を生み出す原動力となるのが、地域に眠る物語を「知的興奮」を呼び起こす価値として再編集し提示することだと私たちは考えます。例えば、伝統工芸の背景にある職人の想い、土地の食文化に受け継がれる知恵、災害を乗り越えてきたコミュニティのレジリエンス。こうしたストーリーは単なる紹介ではなく、触れた人に「その土地の新しい可能性を見つけた!」と思わせるヒントになります。
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熊本城ミュージアム わくわく座 (桜の馬場観光交流施設)
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湯本豪一記念日本妖怪博物館 「三次もののけミュージアム」
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若松城天守閣郷土博物館 AR 城下町再現
私たちの役割は、それを現代の視点で掘り起こし、体験や対話のきっかけになる形にデザインすることです。そこから先は、地域の人や外部の協力者が主役になります。提示された物語に触発され、住民が語り部となり、訪問者が新しい登場人物として関わり、次々と新しいツアーやワークショップ、商品企画などが生まれていく。私たちは、そのプロセスを後押しする「共創のステージ」を用意する存在です。ナラティブの創造とは、観光資源の演出ではなく、地域と人々が共に物語を編み続けるプラットフォームを立ち上げること。その共創こそが、地域と人々の絆を強くする未来への戦略なのです。
活力を創るナリワイ・イノベーション
地域産業のリソースを地域活力とビジネス創造につなげる
地域が持続的に発展していくためには、経済や産業の基盤を自分たちの手で強めていくことが欠かせません。その起点になるのが、地域に眠る「ナリワイ(生業)」や「産業の物語」を掘り起こして再編集し、未来志向のイノベーションへとつなげることだと私たちは考えます。私たちの役割は、まず地域の産業史を丁寧にひもとき、事業者や組合へのヒアリングを重ねることから始まります。そこに浮かび上がるのは、技術の系譜や暮らしの知恵、事業者たちの誇りと葛藤といった膨大なストーリー。その価値を人々に「知的興奮」として共有するために、有識者やクリエイター、行政担当者、外部プランナーなどを招き、対話の場をデザインしていきます。
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燕市産業史料館
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十日町市博物館
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アクロス福岡 匠ギャラリー
ここから浮かび上がるストーリーをミュージアムという手法でメッセージ化しますが、そこでは単に展示を整えるのではなく、地域の人々が自らの歴史や技術を語り、外部の協力者と交流するきっかけを掴むことを重視します。私たちは、その立ち上げ段階をプロデュースし、地域の人々に「自分たちの手で次を創れる」という感触を持ってもらえるように設計していくのです。オープン後は、地域住民や地元の事業者が主役となり、多様な人々と新しいサービスや事業を共創できるような仕組みをつくっていきます。ナリワイ・イノベーションとは、外部から“与えられる” ものではなく、地域自身が主体となって未来を編み出していくプロセス。「知的興奮」を地域自ら創造していくステージを用意することが、私たちの使命なのです。
未来を共に考える風土編集プラットフォーム
歴史文化に眠る「課題解決の知恵」から、未来への道しるべを探る
私たちは、地域の歴史や文化を「古いもの」ではなく、未来をつくるための「知恵の宝庫」と捉えます。自然環境や街並み、暮らしや遊び、なりわい、そしてそこに息づく価値観や習慣。その一つひとつには、長い時間をかけて培われた工夫や、時代ごとに形を変えて受け継がれてきた知恵が眠っています。風土編集のプロセスでは、こうした当たり前に見えるものを掘り起こし、あらためて地域の人たち自身に「こんなに豊かなものを持っていたのか」と感じてもらえるように再編集します。古い建物や町並み、食文化や祭り、生活のリズムや遊び方。何気ない日常を見直すことで、過去と現在のつながりが浮かび上がり、暮らしの中に新しい意味が見えてきます。
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名護博物館
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東灘だんじりミュージアム
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三重県総合博物館 MieMu(みえむ)
私たちの役割は、その知恵やストーリーを「知的興奮」を生み出すコンテンツとして提示し、地域住民が未来を考えるきっかけをつくることです。たとえば展示やワークショップの形で、暮らしの断片を再編集して共有することで、「だったらこんなこともできるのでは?」「今の時代ならこう応用できる」と、自然にアイデアや提案が生まれる土壌をつくっていくのです。この風土編集のステージは、地域の人々が主体的に未来を描き始めるための土台となります。外からの観光客や協力者を迎える前に、まず地域の人々自身が自分たちの足元に眠る知恵に気づき、それを誇りとして次世代につなげていく。そのプロセスこそが、持続可能な地域づくりの最初の一歩なのです。